
実家に帰った時やお友達のお家にお邪魔した時などに「ひょっとしてレンジフードの高さが違う?」と感じたことがある方は多いのではないでしょうか?
レンジフードを設置する高さはキッチンメーカー側で暫定的には決めてはあるのですが、実は設置する際に状況に応じて高さを変えることができるんです。
今回はそんなシステムキッチンに付属するレンジフードの高さについてフォーカスしてみたいと思います。
レンジフードの法的規定
まず知っておかなければいけないのはレンジフードの設置位置や大きさについては法的な規定があり、それに沿って設置することが求められます。
建築基準法 → 火源から排気口フード下端までの距離は100cm以下とする。
消防法 → コンロ天板からレンジフード(グリスフィルター)下端まで80cm以上とする。
わかりやすく原文を嚙み砕き必要部分のみ記載していますが、建築基準法では換気の目的で、消防法では引火防止の目的でそれぞれ上記のような高さ(離隔距離)の規定がなされています。
これを踏まえるとざっくりではありますがコンロからレンジフードの距離は実質的に「80cm~100cm」の範囲内に収める必要があることになります。
逆に考えれば20cmほどは融通が利く範囲があるということになりますので、その範囲内で好みの高さに設置することができると考えられますよね。
レンジフードの高さの考察
近年一般的なキッチンカウンターの高さは標準で85cmものが多いので、それを前提に法規に沿って考えると、
コンロとレンジフードの距離=80cmの時 → 床からレンジフードの距離=165cm
コンロとレンジフードの距離=100cmの時 → 床からレンジフードの距離=185cm
ということになります。
キッチン工事を検討する際は各キッチンメーカーから業者さんの方へ「承認図」といわれる各部材の寸法等が記載された図面が事前に必ず発行されますので、その図面を確認しながら業者さんとの打ち合わせが必要になります。

一般的にはコンロとレンジフードの距離が近い方が換気効率が良く、特にIHコンロの場合はガスコンロのような加熱による上昇気流が発生しないので、できるだけ近い位置の方が良いとされています。
しかし背の高い方が使われる場合は165cmだとレンジフードに頭が当たる可能性もありますし、背の低い方が使われる場合は185cmだとレンジフードのスイッチが押しにくいということがあるかもしれません。
どちらの場合もキッチンを快適に使えるという状態ではありませんよね。
レンジフードの高さを決める手順
すでに出来上がっているものを購入する建売住宅や分譲マンションなどではあらかじめ任意の位置に設置されていますが、注文住宅やキッチンリフォームのように自分たちが使う前提で組み込むシステムキッチンの場合は、下記のような手順でレンジフードの高さを設定するのが良いと思います。
1.まずはキッチンカウンターの高さを決める。
システムキッチンのカタログ等にはキッチンを使う方の「身長÷2+5」あるいは「ひじの高さ-10cm」のどちらかの数値を基準に決めましょう。
特にキッチンを使う方が複数人の場合は「より長い時間使われる方優先」「それぞれの数値の中間辺り」「身長の高い方優先」などの決め方がありますので、全員が無理なく使えるようよく話し合って検討してもらう方が良いです。
カウンター高さが決定してから初めてレンジフードの高さの検討ができます。
2.キッチンカウンターからの距離と床からの距離からレンジフードの高さを検討する。
レンジフードの高さは「コンロにできるだけ近く」「使うときに頭が当たらない」という高さを狙いたいところです。
ですので床からのレンジフードの高さは「背の高い方の身長+5cm」くらいを基準に狙いたいところです。
5cm多めにするのはキッチンマットを敷く時や、スリッパを履く時などのための余裕を見るためですが、心配な場合はもう少し多めの寸法でもよいかもしれません。
そうして決定したいレンジフードの高さが、カウンターからの距離で「80cm~100cm」の範囲内に収まっているかを確認します。
使い勝手と法規の両方を満たすためには「キッチンカウンターからレンジフードの高さ」とともに「床からレンジフードの高さ」を合わせて検討する必要があるんです。
レンジフード高さ決定手順の一例
EX. 身長180cmのご主人と身長160cmの奥様のご夫婦で、カウンター高さ85cmのシステムキッチンを設置する場合。なおキッチンカウンターの高さは奥様の身長基準とする。
ご主人にあわせる場合は床からレンジフードの下端高さを185cmにしたいため、コンロからレンジフードまでの距離は185cm(身長+5cm)-85cm(カウンター)となり、およそ100cm。
奥様基準だと床から165㎝となりご主人の頭がレンジフードに当たるため、ご主人基準の高さを軸に調整。
ご主人基準の高さで奥様がレンジフードのスイッチを楽に押せるかを確認。
ご主人が全くキッチンを使わないなら換気効率を考慮しもう少し奥様基準に寄せる検討も可。
IHコンロを設置する場合は「IHコンロ用レンジフード」を採用するか、高さの再検討が必要。
使われる方の身長差があまりに大きいなど、どうしてもレンジフードの高さで折り合いが付かない場合は、法規の範囲内で背の高い方に合わせ、換気連動型コンロの採用やリモコン式レンジフードの採用、別途レンジフード用の壁スイッチ設置等の検討が必要。
こういった形でレンジフードの高さを検討していくことになります。
ちなみにここでは大雑把にカウンター高さの基準で計算していますが、これはビルトインコンロを前提としているためで、法規では厳密にいえばカウンターからではなく「加熱機器から…」ということになりますのでご了承ください。
まとめ
工事を終えた後でも設置位置を変更できる場合もありますが、あらかじめ決めておかないと必要部材が変更になったりダクト経路の再確保が必要になったりする場合もあり、なにかと面倒な作業になる恐れがあります。
実際に工事をさせていただくお客様だけではなく、色々な知人・友人から「うちのレンジフードの高さがなんか違う気がする…」という話を聞くことがホントに多いんです。
なので、レンジフードの存在は比較的地味ではありますが、事前の検討・確認・打ち合わせは必ず行いましょうね。
ただし全てのシステムキッチンのレンジフードが自由自在に高さを調整できるわけではありません。
メーカーやシリーズによって制約があるものもありますので、高さの調整が必要になりそうな場合はキッチンを決める前に必ず確認が必要です。
ちなみにプロペラ扇からプロペラ扇へのリフォームの場合は、既存の換気用貫通角穴の位置をずらすことは外壁改修まで必要になるため、費用の観点からあまりしないことが多いです。(実際はしなくていい場合が多い)
この記事でのお話の前提として「シロッコファンのレンジフード」という内容としてご理解ください。