システムキッチン周辺収納

ほとんどのキッチンメーカーのシステムキッチンカタログの後ろの方に「周辺収納」というページがあり、様々な収納が掲載されています。

昔とあるお客様に「キッチンメーカーさんって家具も売ってるのね」と言われたことがあり、ちょっとドキッとしたことがありました。

私たち工事業者にとってはキッチン周辺収納ってあたりまえの存在だったんですが、案外ご存じない方も多いのかもしれない…。

ということで今回はシステムキッチンの周辺収納についてお話してみたいと思います。

システムキッチンの周辺収納とは?

キッチンメーカーで揃えられているシステムキッチン用の周辺収納とは、文字通りキッチン本体ではなく「キッチン周辺の収納」を担う商品です。

キッチンの周りにはいろいろと収納するべきものが多いのは皆さんもご存じかと思います。
食器や調理器具はもちろんのこと、家電製品、ストック品、小分け収納、ゴミ箱etc…

それらを収納するためにカップボードだったり、カウンター収納だったりと何かしらの家具を設置するのが一般的ですよね。

そこで、システムキッチンを設置するときに
「ぜひキッチンと一緒に、必要な収納も設置してみてはいかがでしょうか?」
という感じでキッチン本体と同じカタログにラインアップされているのがいわゆる周辺収納です。

カセットコンロを買いに行ったら隣にボンベが売ってますというような、関連商品を陳列しているというイメージですかね。

システムキッチンを買おうと思ったら、隣に必要そうな周辺収納も売っているという状態です。

ですので先般お話したお客様の「家具」という認識はある意味間違ってはいません。

システムキッチン周辺収納と一般家具の違い

調理器具や食器などを収納する什器ですので、どちらも「家具」と呼んでもよさそうな感じもします。

ではシステムキッチン周辺収納と一般家具では一体どういったところが違うんでしょうか?

●システムキッチン周辺収納
・システムキッチン本体と全く同じ表面材を選択できる
・システムキッチン本体とほぼ同様の造りでしっかりしている
・サイズが規格化されているため、複数設置しても統一感のあるデザインになる
・ショールーム展示品で表面材等は確認できるが、欲しいサイズの実物を確認できないことがある
・設置の際は一般的に壁等にビス固定するため、基本的には工事業者が設置

●一般家具
・廉価品から高級品まで幅広いラインアップから選択できる
・多くの販売店でサイズも含めた「実物」を確認できる
・複数設置する場合はサイズやデザインが不揃いになることが多い
・設置の際もビス固定不要のため、基本的にはご自身あるいは家具搬入業者が設置

キッチン周辺収納と一般家具では上記のような違いがあります。

もっと簡単に言うとシステムキッチン周辺収納は「作り付け家具」に近く、一般家具は床に置いて使う「一般的な家具」という感じになると思います。

キッチン周辺収納と一般家具はどちらがいいの?

この質問はキッチンプランを作成するときによく尋ねられます。

「収納する用途としてお使い勝手などの条件を満たすのであればどちらでも構いません。」

と、うっかり言ってしまいそうなところを、お客様のイメージなどをお伺いしながら「作り付け家具」「普通の家具」というようなお話をさせていただくことが多いです。

最近では比較的お安めの家具などが増えてきていますので、価格的な差だけでいうと普通の家具として収納を購入される方がお安くなることが多いかもしれません。

またキッチン周辺の調理機器や収納場所等の配置イメージが決まっていない場合などは、あとから移動ができる普通の家具の購入をおすすめすることが多いです。

キッチンカタログに掲載されているキッチン周辺収納は「作り付け家具」に近いその特性から、あとから位置変更できないなど色々と融通が利かないことも多いです。

とはいえキッチン本体と同じ表面材のキッチン周辺収納はキレイで迫力あるんですよね。
デザインの統一感という観点では唯一無二の選択肢と言えるかもしれません。

そのあたりも踏まえて工事業者さんと綿密に打ち合わせをされることをおすすめします。

キッチン周辺収納だけ別途で購入可能?

これも時々質問を受ける内容ではありますが、なんと多くのキッチンメーカーで別途購入が可能です。

システムキッチン本体の工事と抱き合わせ購入でないといけないと思っておられる方が多いですが、キッチン周辺収納の場合は必ずしもそういうわけではないんですね。

このご質問を受けるケースとして最も多いのが「システムキッチンをリフォームするとき、とりあえず古いカップボードをそのまま使っておいて、諸々の配置が決まってきてからキッチン周辺収納だけあとから購入できますか?」という内容です。

理論上は可能なのですが注意すべき点は、キッチン本体や周辺収納の表面材は定期的にモデルチェンジしラインアップが変わるということ。

この「あとから購入」作戦のリスクとしては、システムキッチンのリフォーム後からキッチン周辺収納を購入されるまでの間に、キッチン自体がモデルチェンジしてしまうという可能性があるということです。

そうなってしまうとキッチン周辺収納の最大のウリである「キッチン本体と同じ表面材」というメリットが失われる可能性があるばかりか、もくろんでいた形状の収納キャビネットがラインアップからなくなったりすることもあるかもしれません。

自動車業界のモデルチェンジ情報ほど厳格ではありませんが、各キッチンメーカーのモデルチェンジ情報も「1年前から発表!」などということはなく、せいぜい数か月前に工事業者宛に情報が入ってくるような感じです。

もし「あとから購入」作戦を決行しようとお考えの方がおられましたら、そのあたり慎重に進めていただく方が良いでしょう。
 

それともう一つ、とても大切なことが…

システムキッチンの周辺収納は「作り付け家具」とお伝えしてきましたが、その理由は壁などにビス止めをするからです。

壁等にビス止めをするということは、当然壁等と収納が接地する壁や天井面に下地補強が必要になります。

記事冒頭の写真の収納のように宙づりの吊戸棚的に設置するものも多いため、収納本体の重量だけでなく収納物の荷重に耐えられるように必ず下地補強が必要になってきます。

「あとから購入」作戦をお考えの方がおられましたら、そのあたりも事前に打ち合わせの上での検討が必要ですのでお忘れなきようお願いします。

システムキッチン周辺収納を選ぶときの最大の注意点

キッチンメーカーから購入するキッチン周辺収納であっても家具屋さんで買うカップボード等であっても、キッチンの周辺収納を選ぶ際に注意すべき最大のポイントがあります。

それはズバリ「スチームオーブンレンジ」です!

シャープのヘ〇シオを皮切りに「油分をカットしたヘルシーな調理ができる」という触れ込みで一気に市場を席巻したあのスチームオーブンレンジですが、とにかくこいつらには色々と悩まされました。

とにかくデカいんです。本体サイズが。

特に奥行に関しては一時期「この収納にスチームオーブンレンジが乗るのか?」という一点で収納キャビネットの奥行を決める必要があったほどです。

しかし、今からスチームオーブンレンジを買う人は安心してください。

最近のスチームオーブンレンジの奥行は多くのメーカーで450㎜以下になってきていますので、一般的なキッチン周辺収納の奥行450㎜サイズのものでピッタリ収まるはずです。

キッチンをリフォームしてもこれまでのスチームオーブンレンジを使いたいという方や、これから新しくスチームオーブンレンジを購入される方も、必ず「奥行」「横幅」「高さ」に加えて、横面・背面・上面の「離隔距離」を確認してくださいね。

「本体は収納からはみ出るけど足の部分は乗る」という場合もあります。

なのでできれば家電メーカーのカタログ資料などを確認して、スチームオーブンレンジの足の位置まで確認できればもう完璧です。

そのほかにも近年では様々な家電が続々と販売されていますので、それぞれの設置場所などもイメージしながら周辺収納を選んでいってくださいね。

まとめ

システムキッチンのリフォームをする際はついついキッチン本体の方に目が行きがちで、キッチン周辺収納への検討は後回しになりがちな傾向があります。

しかし周辺収納も含めて「キッチン」と捉えるなら、非常に大切な検討事案であることは言うまでもありません。

キッチン本体が変わるということに加え周辺収納が変わるということは、今まで何なら目をつむっていてもできていたキッチン周辺での作業手順が一新されることを意味します。

キッチンがリフォームされ作業手順をゼロから再度構築していく作業は時折ストレスに感じてしまうこともあるかと思いますが、その中でも「慣れれば大丈夫」という点と「こうしておけばよかった」という点に徐々に分かれてきます。

特にキッチン本体と周辺収納の関係性はどうしても「移動」や「振り返り」などの動作が関連してきますので、配置によっては使いにくいと感じることもあるかもしれません。

できるだけ移動距離の少ない配置や、必要な振り返り動作の中でも利き手との関連性を考慮した配置など、事前に検討していればもう少し楽ができたかもしれないちょっとした配置などを、優先順位を設けながら検討していくことが大切なのかなと感じています。

新築の時にはキッチンの形すらない段階でこういった検討も難しいかもしれませんが、リフォームなら現場で確認が可能かもしれません。

キッチンを毎日作業する「仕事場」だと考えるのであれば、こういった細かい面も見逃さないようにしなければいけませんね。