ガスorIH

未だに結論が出ない「ガスvsIH」コンロの問題ですが…
めちゃくちゃ悩みますよね。

ネット上でも「メリット!」「デメリット!」と記載があったり、「私はこうしました!キリッ!」「いえいえこっちの方がいいです!」という記事を見かけたりもします。

今回は個人的な独自の視点でこの「ガスvsIH」コンロ問題に切り込んでいきたいと思います。

そもそもの論争のきっかけ

そもそもこの論争は、ガスエネルギーを使わない「オール電化住宅」が1990年頃からスタートしたことがきっかけではないかと考えます。

各電力会社は「オール電化」にあわせて様々な電力プランを発売しはじめ、エコキュートやIHコンロ(クッキングヒーター)の性能向上も相まって従来の都市ガス未整備地域を皮切りにどんどん普及していきました。

「熱エネルギーを利用するにはやっぱガスでしょ!」という時代から、電気エネルギーでも遜色ないほどの機能と利便性が発揮されるようになってきてから、いよいよ対立構造が表面化してきたように思います。

そういった経緯がそもそもの「ガスvs電気」論争のきっかけとなっています。

なぜ論争になるのか?

「給湯」「調理」「空調」という点で対立構造に見えてしまう「ガスvs電気」ですが、そもそも私たち消費者にとっては目的が果たせればどちらでも構わないわけです。

事実どちらのエネルギーを利用されているお客様に直接聞いても、それぞれが良かった点や悪かった点などを挙げられますが、目的はそれぞれ果たしておられます。

ではなぜ論争になるのでしょうか?

これはおそらくですが…  単に利害関係者の都合なのではないかと個人的には思っています。

各ガス会社、電力会社のホームページを見ても各々有利な点のみを積極的にアピールしています。
各施工業者さんのホームページをでも自分たちの得意な分野、売りたい商品の側に立ってアピール合戦がされています。

それぞれの利害が一致する方向性に沿って良い面ばかりが強調された内容になっているわけです。
まあ商売なので当たり前なんですけどね。

というわけで、次はキッチンのメイン機能の一つである「コンロ」についてのそれぞれの各論から切り込んでみたいと思います。

IHコンロは絶対安全?

一般的に「IHコンロは安全!」「ガスコンロは火災の危険がある」といわれていますが、ガスコンロは直火ですので確かにその通りです。

ただ現在販売されているガスコンロは全て「SIセンサー」と呼ばれる機能の設置が義務付けられており、温度管理やガス供給をコンロが自動で行ってくれるようになり格段に安全性は向上しました。

極論を言えば衣服等への燃え移りにさえ気を付ければ、現在はガスコンロでも十分安全になったといえます。
(一般家庭で豪快にフランベすると火災報知器が鳴ることがありますので、別の意味で注意ですが…)

逆にIHコンロは直火ではないので燃え移りの心配はかなり少ないですが、使用直後は余熱の残った天板にうっかり触れるとやけどの危険性もあります。

また温度上昇の早いIHコンロは急激な温度上昇にセンサーが対応できず、制御前に発火温度に達する可能性もあり得ます。
過去に少量の調理油を引いた状態で加熱しつづけ、具材を入れるまでの間に発火したということも実際に報告されています。

他には使える鍋等の種類やラジエントヒーターに関する取扱いなど、説明書通りに使用すれば問題のないことでも、ついついガスコンロと同様の感覚で使用してしまうことが危険なことにつながってしまう可能性があります。

直火を使わないことで安全面で有利なことは疑う余地がないのですが、「IHコンロは火を使わないから絶対安全!」とまでは一概に言えませんのでご注意ください。

IHコンロは災害時に復旧が早い?

一般的に災害時においては都市ガスインフラより電力インフラの方が復旧が早いといわれています。

事実、各地域の大震災の影響を受けた方にお話を聞くと、ほとんどが「電気の方が復旧が早かった」とおっしゃっておられます。

では同じ災害でも、例えば大型台風や近隣大規模火災等の場合はどうでしょうか?
台風や近隣火災などで停電を経験された方も多いかと思いますが、その時ガスは止まりましたでしょうか?

このように災害の種類によって被害を受けるインフラは変わりますので、一概に「電気の方が絶対によい」というわけでもなさそうです。

ちなみに大災害に遭われたプロパンガスをご利用の方は電気もガスもあまり復旧の早さは変わらなかったとも聞いたことがあります。

大阪近辺では都市ガスよりランニングコストが割高なケースが多いプロパンガスですが、都市ガスほど大掛かりなインフラ設備がない分、災害時には有利なのかもしれませんね。

光熱費はどっちが安い?

これに関しては単純に比較できない複雑な問題です。

コンロに限っての話となると一定条件の数値で判断するなら一般的には都市ガスの方がエネルギーコストは安くなるそうです。
いわゆる実験数値ということになるでしょうか?

ですが、各電力会社ではプランによって夜間に単価が安くなるなど、コンロ以外の「給湯」「空調」の面も含めたトータルでのエネルギーコストで各ガス会社と勝負しています。

深夜電力でお湯を沸かす「エコキュート」が、家全体の光熱費の圧縮にかなりの貢献をしているわけですね。

なのであえて光熱費を優先して比較し選択するのであれば、コンロ単体ではなく「給湯」や「空調」の面も含めたトータルでの検討が必要になるように思います。

みなさんにとってとても気になるお題ではありますが、行きつくところは「家全体の設備次第で…」とか「使い方次第で…」ということになりそうです。

調理はどっちがしやすい?

これについてはそれぞれの特性の違いからくる使い方の違いで差が出ます。

IHコンロは熱の立ち上がりが早く、お湯を沸かすのもガスより早いです。
また基本的に一定温度での安定加熱が得意なので、ガスとは違う使用感に慣れてくれば「煮物」「揚げ物」などがしやすい調理機器といえます。

電気容量などの制限はあるものの、IHコンロでも近年ではガスより火力に劣るようなことはないので、使い方によってはガスと遜色ない調理をすることが十分可能です。

一方、ガスコンロはやはり「直火であること」が最大の魅力です。
直火特有の表面加熱をする「焼物」や大火力で鍋を振りながら「炒め物」などをしたいという場合はガスコンロが便利です。

またガスコンロは無段階の微妙な火加減の調整ができるため、調理方法によっては必要になるケースもあるかもしれません。

逆にガスコンロでも調理をしやすくする温度管理機能やタイマー機能を搭載したモデルもあり、IHコンロと似た調理方法を実現できるものが徐々に増えつつあります。

なので調理のしやすさで比較するなら、ご自身の生活スタイルや得意料理を軸に選ぶのも一つの方法かもしれませんね。

お手入れはどっちがしやすい?

これに関してはどうみてもIHコンロに軍配が上がります。
天板がフラットなので、サッと拭くだけというのは大きな魅力です。

ガスコンロもガラストップやホーロートップといった昔のものと比べるとお手入れのしやすいほぼフラットな天板が主流となり、五徳やガス口の形状もお手入れしやすい形状へ進化はしています。

そのほかの違いは?

そのほかにIHコンロの特徴として「利用できる調理器具が限られる」「上昇気流が発生しないため専用のレンジフードを設置する必要がある」「調理中も室温が上昇しにくい」「コンロ用の電源が必要」などが挙げられます。

新築時にはあまり問題にはなりませんが、リフォームでガスコンロからIHコンロへ変更する際などは気を付けたい点がいくつもあり、最低でも電源確保とレンジフード交換の費用に関しては視野に入れておきたいところです。

逆にIHコンロからガスコンロにする場合も当然ですがガス管の工事が必要になります。
現在オール電化のお宅ならガス管の引込工事からのコストを視野に入れておく必要がありますよね。

リフォームではコンロ単体の価格やランニングコストも大切ですが、付帯する工事内容についても検討が必要になってきますね。

まとめ

ガスコンロかIHコンロかを検討する場合はそれぞれ「別の調理機器」だという認識を持ってもらう位がちょうどいいように思います。

どちらのコンロもそれぞれ良し悪しがあり使い勝手が違うため、「こっちの方が絶対いい!」というよりもむしろ「選択肢が増え、より自分に合ったものが選べるかも」というように考えてご検討いただくと、コンロ選びがより楽しくなるように思います。

実際にリフォームの現場では「親が高齢なので危険なガスコンロではなくIHコンロを…」という子供さんからのお話をよく聞きますが、工事の後、実際にコンロを使われるご本人様から「逆に使いにくい」「火が見えなくて怖い」「天板で手をやけどしてしまった」「フライパンを振れない」「焼目が付かない」などと聞くことが多くあります。

当然同じようなケースで満足されている方もおられるので話を聞いてみると、事前にしっかり話をされて使い勝手の違いについてご理解されており「これはこれで使いやすいところもある」と楽しんでおられます。

どちらも極端な例ではありますが、こういったことは話し合いや説明だけではなかなか解決できない問題なので、そういったご相談がある時には「卓上IHコンロ」を買って試しに使ってみてはどうでしょうか?とおススメしています。

使用感をそれなりに実感できることは使われるご本人様にとって一番大切だと思いますし、仮に後々使わなくなったとしても災害時への備えとして保管しておけばいつか役に立つときがくるかもしれません。

もちろん日々のランニングコストも大切ではありますが、災害の多い国で暮らしている者として、自宅に複数のインフラがあるという状態を維持することも、いつ起きるかわからない災害を乗り切るために大切なのかもしれないと個人的には感じています。

多少大げさなタイトルからお話してきましたが、それぞれ「こっちじゃなきゃダメ!」と盲目的に信じておられる方が多いと感じることが多かったため記事にしてみました。

インターネット上の一方的な情報だけではなく、「曇りなき眼」であなたにピッタリのコンロを探してみてくださいね。